コロナ禍前のとある年末。

私は１Kの単身用賃貸マンションに住んでいる。

22㎡のよくある間取りで、玄関を入ると右側にキッチン、左側に洗面所とトイレのドアが2つ並ぶ細長い廊下、その先に6畳程度の部屋がある。

廊下は狭く、トイレのドアは前面に設置している収納棚にギリギリ当たらずに開閉ができる程度だ。

翌日は友人と2人で旅行の約束をしていた。

ウキウキしながら中途半端に荷造りをしたキャリーバッグを廊下に置いて就寝。キャリーバッグは半開きでグラついていた。

翌朝、何度も鳴るアラームを止め、半分寝ながらトイレへ向かう。

薄暗い空間の中、昨日無造作に置いたキャリーバッグがドアの開閉を邪魔していたため、適当にずらして入室した。

バンッ

勝手にドアが閉じた。

「キャリーバッグが倒れてドアが閉まったのかな」と思いつつ、出ようとしたところ、ドアが動かない。

　　

閉じ込められた・・・

状況を理解した瞬間、体温が一気に上昇し、冷や汗も噴き出した。

半開きだった目も全開になった。

「どうしよう、どうしよう…」大きな独り言を繰り返すしか出来なかった。

部屋は2階。窓は無く、スマホも持ち込んでいない。

叫んだところで誰かに聞こえるかもわからない。

しかし、それ以上に時間が気になった。

起床した時点で待ち合わせ時間まで余裕はない。

私と連絡も取れず、真冬にポツンと待ち続けてる友人の姿が瞼に浮かんだ。

「…早く行かなきゃ！」

そう思ったら、力が湧いてきた。

“ドアを破壊する”と心に決めた。

アドレナリン全開でドアを思い切り何度も何度も蹴り続けた。

アクション映画のようにドアが吹き飛ぶことはなかったが、フラッシュ戸だったため、結果20㎝程度の穴があいた。

穴の向こう側が見えたときは最高に感動した。

穴から手を伸ばし、原因となったキャリーバッグを除去。

私は脱出に成功した。

どうやら、キャリーバッグのハンドルを伸ばしたままにしていた事もあり、ドアと収納棚の間にぴったりフィットしてしまったようだ。

　　　

修繕費という現実

楽しかった旅行から一転、帰宅後はドアの破片が飛び散った室内が待っていた。

管理会社に連絡をしたところ、当然ながら修繕費は借主負担。

10万円は超えるだろうとの事。

一気にテンションが下がったその時、「火災保険」を思い出した。

契約内容を確認すると、補償内容の一例で、「子どもが誤ってぶつかり、壁に穴をあけてしまった時」と記載がある。

しかし、今回は「大人」が「意図的に破壊」してドアに穴をあけた。

ダメ元で問い合わせると、「大変でしたね、無事でよかったです」と優しい言葉と共に、なんと全額補償してもらえることになった。

（※保険会社、および契約内容によって補償内容は異なります）

火災保険の必要性

現在、賃貸物件の大半は「火災保険」の加入を必須としている。

火事なんて滅多に発生するものではないし、「もったいない」と感じるかもしれない。

しかし、「火災保険」といっても、火事だけではく、様々な災害やトラブルによる補償があり、私たちを万事において守ってくれる便利な保険、それが「火災保険」なのである。

加入済みの方は、今一度、契約内容を確認してみてはいかがだろうか。

また、トイレ等の“閉じ込められ”は実際に死亡事故も発生している。

同居人がいる場合でも、ドアの前で同居人が倒れてしまい、閉じ込められてしまった方も含め、亡くなってしまった悲しい事故もあったそうだ。

携帯やスマホの持ち込みができれば安心だが、難しい場合はぜひトイレや浴室にハンマーを常備しておくことをお勧めします。